Z世代やα世代を中心としたドパガキ仕様のSNS「setlog」が急成長しています。
setlogは韓国発のSNSアプリで、Instagramのような徹底的に作り込まれた世界観ではなく、部屋着のまま転がっている姿や移動中の風景といった何気ない「生の日常」をそのまま共有するスタイルが爆発的な人気を集めています。
飾らない日常を映すだけのsetlogが、なぜこれほど若者の心を惹きつけるのか。その魅力をデザイナーの視点から結構マジメに紐解きますよ。
ドパガキたちが愛する主要なSNSの違いと特徴
setlogの位置づけをより理解するために、現代の代表的なSNSの仕様や特徴をSNSごとにまとめてみました。
TikTok
TikTok<ティックトック>の運営会社は中国の北京に本社を置く巨大テクノロジー企業「ByteDance」です。高度な推薦アルゴリズムを強みとして展開されています。
投稿形式は縦型のショート動画で、スワイプし続ける無限のエンタメ体験をUXのコアに据えているのが特徴ですね。動画の編集や構成が必要になるので投稿の心理的ハードルはやや高めですが、フォロワーの有無に関わらずアルゴリズムによってオープンに拡散される仕組みが魅力です。
Instagram<インスタグラム>の運営会社はアメリカに本社を置く「Meta Platforms, Inc.」です。2010年創業当時の運営会社は「Burbn, Inc.」で、後にアプリ名を冠した「Instagram, Inc.」へと社名が変更されました。
写真共有アプリとして創業されて運営されていましたが、2012年にFacebook(Meta)に買収されてから巨大プラットフォームへと成長しました。
写真やリール動画を中心とした投稿形式で、洗練されたブランディングや美しい世界観の追求が求められます。フォロワーを中心とした繋がりがメインで、見栄えを気にする必要性から投稿の心理的ハードルは比較的高めと言えますね。
BeReal
BeReal<ビーリアル>の運営会社はフランスの「BeReal SAS」で、元GoPro社員のアレクシス・バレイヤたちによって創出されました。
既存のSNSにおける過度なフィルタリングや「映え」への疲弊に対するアンチテーゼとして立ち上げられ、2024年にはフランスのモバイルゲーム大手「Voodoo」の傘下に入っています。
1日1回、不定期に届く通知に合わせて撮影する無加工写真がメインのフォーマット。リアルな「今」を同時に切り取るライブ感をUXのコアにしていて、親しい友人同士で飾らない日常を共有するスタイルなので投稿の心理的ハードルは低く設定されています。
setlog
setlog<セットログ>の運営会社はアメリカの「New Chat Inc.」です。2025年12月に韓国でiOS版がリリースされて大バズりして、そのブームが日本にも波及してきました。
CEOのデヴィン・ドティさんはSnapchatでエンジニアやデザイナーを務めたB2Cのプロフェッショナル。「韓国発」と呼ばれることも多いですが、これは最初のリリースと大ヒットの舞台が韓国だったからですね。
Z世代やα世代が日常的に感じる動画編集の手間とSNS疲れを同時に解消する目的で創設されました。
1時間ごとに届く通知に合わせて撮影する短時間動画が基本形式で、蓄積されるドーパミンループをUXのコアに置いています。共有範囲は最大12人程度の小規模なグループに限定されていて、数秒撮るだけという手軽さから投稿の心理的ハードルは極小レベルに抑えられています。
BeRealとsetlogの違い
ちなみに、setlogに似たようなサービスにBeRealがありますが、BeRealは「1日1回ランダムに届く通知から2分以内にノー加工で「今この瞬間」の写真を友達と共有することを目的としているのに対して、setlogは「1時間に1回、数秒の短時間動画を撮り溜めて、1日全体のリアルな流れを1本のVlogとして友達と共有/記録すること」を目的にしています。
それぞれ「瞬間の切り取りをするBeReal」と「1日をストーリー化するsetlog」という目的とターゲットの棲み分けがしっかりと確立されているので、おじさん/おばさんは「どっちも同じようなもんやんけ!」と言わないようにしておきましょう。
デザイン設計はそれぞれ違うんですよ。
脳を無限に刺激する通知ループの設計
では、デザイン目線からsetlogを見てみます。
setlogの体験を形作っている最大の要素は、1時間ごとに訪れる撮影トリガーと、2秒という極端な短尺動画の組み合わせですね。
従来のSNSにおけるドーパミン創出は、投稿に対する「いいね」や「コメント」といった他者からのフィードバックが中心でした。
でもsetlogは「1時間ごとの通知」と「2秒の撮影」という独特のテンポ感によって、アプリを開いて行動を起こす心理的ハードルを極限まで下げています。
撮影時間わずか2秒という制約は、ユーザーに完璧な画角を作る隙を与えません。画面を作らなくとも成立する手軽さが継続的なトリガーとなっていて、短いサイクルで脳に達成感や刺激を与えるドーパミンループをアプリの基本動線として自然に組み込んでいるんですね。
クローズドが生み出す心理的安全性
setlogのもうひとつの大きな特徴は、共有範囲が少人数のグループに限定されている点。
フォローやフォロワーといったオープンな繋がりやアルゴリズムによる「おすすめ表示」は存在せず、信頼できる親しい仲間内だけで動画が共有されます。
デザインの観点から見ると、これは「心理的安全性」をUXのコアに据えた設計と言えます。
不特定多数に見られるプラットフォームでは、どうしても「よく見られたい」という自己演出の圧力が働いてしまうので、投稿すること自体がストレスになりがちです。
それとは真逆に位置するsetlogは、最初から閲覧者を限定することで他人から評価される恐怖を完全に取り除いています。ユーザーは完璧な自分を演出する必要から解放され、ありのままのカットを投げ合えるようになります。
過度な装飾やフィルタを削ぎ落とし、動画の書き出しまでを全自動化させたシンプルなUIは、「見せるためのデザイン」から「繋がるためのデザイン」へのシフトを象徴していますね。
体験をデザインするVlog自動生成機能
setlogでは、1日を通して撮り溜めた2秒の動画カットが、ワンタップで時系列のミニVlogとして自動生成されます。
これは新しいアプローチですね。
ユーザー自身に高度な動画編集をさせない仕様は不便そうに思えますが、これこそが「ユーザーの脱落を防ぐ体験設計」です。編集という最も負荷の高いプロセスをシステム側が肩代わりすることで、ユーザーは「日常を切り取る」という楽しい部分だけに集中できます。
1日の終わりに手軽にクオリティの高いログが完成する体験は、アプリを使い続ける強力なインセンティブになります。無駄な機能を削ぎ落とし、コア体験である「記録と共有」だけに特化させた引き算のUIデザインが高継続率を生み出しているのですね。
さいごに
setlogのヒットから見えてくるのは、今後のデジタルプロダクトにおけるUXデザインの潮流です。
高機能化や「映え」の追求が飽和した現代においてユーザーが真に求めているのは、過剰な承認欲求の煽りやアルゴリズムに振り回されない「気楽でリアルな体験」だということ。
ユーザーにストレスを感じさせない通知の頻度、編集の手間を省くオートメーション、そして安心して自己表現ができるクローズドな空間作り。これらを高いレベルで融合させたsetlogのデザイン手法は、今後のウェブ制作やアプリケーションの開発においても多くの視点を与えてくれるはずです。
気になった方は、ぜひ実際に触ってそのテンポ感を体験してみてくださいね。
得られるものがきっとある…かもしれません。







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